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松江地方裁判所 昭和61年(わ)99号 判決

国籍

韓国

住居

島根県江津市江津町八七九番地二

職業

遊技場経営及び会社役員

藤田政夫こと

黄珪性

一九一八年一〇月八日生

本店所在地

島根県江津市二宮町神主イ一六三一番地二

商号

有限会社つのづグランドパーク

代表者

藤田政夫こと黄珪性

代表者住居

島根県江津市江津町八七九番地二

右藤田政夫こと黄珪性に対する所得税法違反、法人税法違反、右有限会社つのづグランドパークに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官望田耕作出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

1  被告人藤田政夫こと黄珪性を懲役一年及び罰金一六〇〇万円に、被告会社有限会社つのづグランドパークを罰金五〇〇万円に各処する。

2  被告人藤田政夫こと黄珪性においてその罰金を完納できないときは、金五万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場留置する。

3  被告人藤田政夫こと黄珪性に対し、この裁判確定の日から三年間その懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人藤田政夫こと黄珪性は、島根県江津市江津町八七九番地二に居住し、同市内においてパチンコ店を経営するとともに被告会社有限会社つのづグランドパークの代表取締役としてその業務を統括しているもの、被告会社有限会社つのづグランドパークは、同市二宮町神主イ一六三一番地二に本店を置き、パチンコ店等を経営しているものであるが

第一  被告人藤田政夫こと黄珪性は、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどして無記名及び仮名の定期預金を設定する等の方法により所得を秘匿した上

一  昭和五七年分の実際の所得金額が七五、五九四、四六二円で、これに対する所得金額が四〇、七八六、七〇〇円であるにもかかわらず、同五八年三月一五日、浜田市殿町一一七七番地所在の浜田税務署において、同税務署長に対し、同五七年分の所得金額が五、〇二六、九五六円で、これに対する所得税額が四二〇、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額四〇、七八六、七〇〇円との差額四〇、三六五、九〇〇円の所得税を免れ

二  同五八年分の実際の所得金額が一九、六七〇、三四四円で、これに対する所得税額が五、七五四、九〇〇円であるにもかかわらず、同五九年三月一五日、前記浜田税務署において、同税務署長に対し、同五八年分の損失金額が九、二二九、三九七円で、これに対する所得税額が〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額五、七五四、九〇〇円との差額五、七五四、九〇〇円の所得税を免れ

三  同五九年分の実際の所得金額が四、九八〇一、八四三円で、これに対する所得税額が二二、九〇三、二〇〇円であるにもかかわらず、同六〇年三月一五日、前記浜田税務署において、同税務署長に対し、同五九年分の所得金額が二〇、一六八、八六七円で、これに対する所得税額が六、〇九四、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額二二、九〇三、二〇〇円との差額一六、八〇九、二〇〇円所得税を免れ

第二  被告人藤田政夫こと黄珪性は、被告会社有限会社つのづグランドパークの業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して得た資金を自己の個人資金と混合して無記名及び仮名の定期預金を設定する等の方法により所得を秘匿した上、同五八年五月一日から同五九年四月三〇日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が五三、九九三、二八五円で、これに対する法人税額が二二、三八四、一〇〇円であるにもかかわらず、同五九年六月三〇日、前記浜田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三、二〇七、六一〇円で、これに対する法人税額が九八三、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同事業年度の正規の法人税額二二、三八四、一〇〇円との差額二一、四〇〇、八〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全体の事実につき

一  藤田政夫こと黄珪性の当公判廷における供述

一  藤田政夫こと黄珪性(七通)、木下玉子こと李貫珠(三通)、藤田英洋こと黄英洋(二通)、湊トミエ、大堂敏視、山藤静香、渡辺常弘の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の領置てん末書

一  検察事務官作成の昭和六一年九月三日付報告書

一  検察官作成の電話聴取書

判示第一の事実につき

一  脱税額計算書二通(昭和五七年分及び昭和五八年分)

一  押収してある所得税の確定申告書三綴(昭和六二年押第三号の一ないし三)、所得税青色申告決算書三綴(同押号の四ないし六)

一  検察事務官作成の昭和六一年九月二六日付報告書二通

一  大蔵事務官作成の渡辺常弘(昭和六〇年九月一八日付)、黄洋子、神田栄子こと黄栄子、岩谷弘司、藤田佳子に対する質問てん末書

一  検察官作成の昭和六一年八月一一日付、一二日付、一三日付(全八丁のもの)報告書

一  検察官作成の捜査報告書

一  大蔵事務官作成の現金調査書、預金調査書、建物調査書、事業主貸調査書、(有)つのづグランドパーク勘定調査書、借入金調査書、預り金調査書、事業主借調査書、青色事業専従者給与額調査書、青色申告控除額調査書、白色事業専従者控除調査書、利子所得調査書、繰越損失金の当期控除額調査書、元入金調査書、一時所得調査書、配当所得調査書

一  浜田税務署長作成の所得税の青色申告の承認取消し通知書謄本

判示第二の事実につき

一  脱税額計算書(自昭和五八年五月一日至昭和五九年四月三〇日分)

一  押収してある法人税決議書綴一綴(前同押号の七)

一  昭和六一年二月二一日付の大蔵事務官作成の渡辺常弘に対する質問てん末書

一  検察官作成の昭和六一年八月一三日付報告書(全五丁のもの)

一  大蔵事務官作成の売上高仕入高調査書、給料賃金調査書、欠損金の当期控除額調査書

一  浜田税務署長作成の青色申告の承認の取消通知書謄本

一  登記官作成の商業登記簿謄本(認証日昭和六一年八月一三日)

(法令の適用)

被告人藤田政夫こと黄珪性につき

各所得税法二三八条一項、二項(懲役刑及び罰金刑併科)、法人税法一五九条一項(懲役刑及び罰金刑併科)、刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情最も重いと認める判示第一の一の罪の刑に法定の加重)、罰金刑につき同法四八条二項。刑法一八条。懲役刑につき刑法二五条一項。

被告会社有限会社つのづグランドパークにつき

法人税法一五九条一項、一六四条一項。

(量刑の理由)

本件所得税、法人税の脱税額が総計で八四〇〇万円を超える巨額に昇っていること、所得逋脱率も約八六パーセントと高率であること、所得秘匿方法も巧妙悪質であること、近時脱税犯が形式犯でなく、反社会的、反道徳的な実質犯であるとの認識が社会一般に浸透し、脱税犯に対する眼も極めて厳しいものになりつつあるが、反面大型で悪質な脱税事犯があとを断たない情勢にあること、被告人黄は本件犯行発覚後自己の行為を反省悔悟し、所得税、法人税とも修正申告をなして重加算税等も納付ずみであること、被告人黄には業務上過失傷害罪による罰金前科を除いて前科はないこと、被告人黄は六八歳という老齢であり、ぜん息の持病もあって健康がすぐれないことなど一切の事情を考慮し、主文の量刑をした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 須田贒)

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